この結びは中国でも古くから飾り結びとして用いられたものである。
中国のお寺の神堂の幕や飾りに使われるため,西洋人はこの結びを『廟宇結』(Chinese
Temple Knot)と呼ぶ。作り方は簡単で形が美しく,変化もつけられるので,応用範囲は広い。
配色の線を入れた複線の吉祥結は「母親結」と呼ばれる。
紐扣結の名はその働きからつけられた。この結びと他の美しい結びを組み合わせて,一対のボタンにしたのである。
清代には『紅絨結頂』と呼ばれ,赤いひもで紐扣結をつくって皇帝の略帽や皇太子の礼装の冠の頭頂を飾った。
紐扣結は線同士が交差しているためほどけにくく,線の端を中に入れることができるので,作品の端の部分に用いられる。
盤長結は6つの耳をもつひし形の結びである。この結びは変化が多彩で下に多少重いものをかけても容易には解けないため,単独で使用されることがたいへん多い。この結びと他の結びを組み合わせて,胡蝶結や仙鶴結・方勝結などたくさんの変化結びをつくることができる。
盤長とは,仏教八寶(法螺,法輪,寶傘,白蓋,蓮花,寶瓶,金魚,盤長)の一つで,万物の根源を表す仏門のしるしである。
中国では動物や字を円形にデザインしたものは,吉祥の意味をもつ。例えば,團龍・團鶴・團壽・團福などのように,にしき織の布によく見られる。
團錦結は花びらの数が自由に増減でき,中央に穴があって中にきれいな玉を入れるとたいへん美しい。『花團錦簇(華麗な)』の結びという意味で,「團錦結」と名づけられた。
藻井結は清代の装飾によく用いられている。これは,4つの片結びを輪状にからめてつくったものである。
中央の「井」の字や,まわりの花弁のように絡んだ線は『藻井圖案』(天井板の美しい模様)のように見えることから,この名がついた。単独で使われることが多い。
平結は,芯に片結びを左右交互に繰り返していく結びである。平結自体に装飾の働きはないが,西洋ではかごや網を編むのによく使われる。
中国結びでは,蜻蛉結(とんぼ結び)の尾の部分に用いられる。